糖化(glycation)が体に及ぼす影響

糖化とは

「糖化」とは、糖と、たん白質に熱が加わることで結びつき、見た目が褐色に変化することである。食品加工の上では風味付けや色付けなど様々に有効利用されてきた技術である。
糖化は体の中でも起こる反応である。つまり、食事でとり込まれた糖質(炭水化物)は血液中のブドウ糖=血糖になるが、体の各組織をつくるたん白質とともに体温によって加温されることでゆっくり結合し、糖化反応が起きる。糖化は食品加工の上で利用価値の高い化学反応であるが、これが体の中で起きてしまうと、様々なダメージを与えてしまう。
体の中で糖化が起こると体の組織をつくるたん白質に変化が起こり、食品同様に茶色くなる。また組織が硬く、もろくなるため、たん白質の機能にも影響が現れる。最終的には糖化反応によって糖化最終生成物・AGEs(エイ・ジー・イーズ/advanced glycation endproducts)が生成する。AGEsとは、1つの物質の名称ではなく様々な種類の化合物の総称であるが、これが一旦できてしまうと元には戻らず、体に蓄積されていって、それがさらに悪影響を与えてしまうことになる。体内の糖化では、このような現象が起きて、健康面あるいは美容面でも様々な問題を引き起こしてしまう。
また、AGEsは糖の影響だけでなく、飲酒や喫煙、脂質の過剰摂取といった様々な要因によっても生成されることがわかっている。

AGEsが蓄積するという変化が人の体内で起こってくるとどうなるのか、各部位の変化を挙げてみよう。

糖化(glycation)が体に及ぼす影響

皮膚色の変化
たん白質が茶色くなる変化は皮膚の黄褐変としてあらわれる。つまり肌のクスミ(黄ぐすみ)が進んでしまうことになる。

肌の弾力・ハリがなくなる
皮膚を構成するコラーゲン繊維を顕微鏡レベルで見ると“三重らせん構造”を持っている。コラーゲンは、このバネ構造によって弾力を維持している。しかし、コラーゲンたん白が糖化すると、繊維と繊維の間をつなぐ “悪玉架橋”とよばれる邪魔物が無秩序に形成され、繊維でできたバネ構造がガチガチに固定されてしまう。その結果、繊維の可動性やしなやかさが失われ、弾力性が低下しハリがなくなって、硬くなってしまう。

動脈硬化の原因に
いわゆる悪玉コレステロールであるLDL-Cは、通常なら白血球のマクロファージが食べて分解し、消してくれるが、LDL-Cが糖化してAGEsが溜まった状態になるとマクロファージが食べても分解しきれずに“泡沫細胞”という状態になって血管の内壁に蓄積する。これがアテロームという粥状の塊を形成して動脈硬化を招いてしまう。

組織の炎症
糖化によってできてしまったAGEsは、蓄積するばかりでなく、“RAGE(レージ)”と呼ばれるAGEsの受容体と結合し、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)を生み出す。これにより、組織は炎症を起こしやすい状態になってしまう。

この他にも、骨で糖化が起これば骨粗鬆症、脳でのAGEs蓄積がアルツハイマー病にも関与するなど、糖化ストレスは全身に影響を及ぼし、生活習慣病や老化につながっていくものと考えられている。

糖尿病
また、糖尿病との関連で言うと、糖尿病は糖の代謝機能が低下して血糖値が一定の基準を超えて高い状態を示す病気であるから、高い血糖値が糖化を促進し、末梢神経障害や腎症、網膜症といった合併症を進行させてしまう。
糖尿病は、血液中の糖分がうまく肝臓や筋肉脂肪等の細胞内に貯蔵されないために、血液の濃度が高くなっている病気であるから、血管をはじめとして血液を供給されている体のいろいろな臓器は高い糖にさらされていることになる。
たんぱく質は糖に接触すると変性する性質があり(これを糖化という)この糖化により、体内では、主に血管が変性、大きな血管や小さな血管が動脈硬化や変性を起こし臓器の障害がもたらされる。
三大合併症(眼、腎、神経)
1. 血管障害
2. 感染(高い糖濃度の血液が、菌を繁殖しやすい状態を作る)
糖尿病における糖化の進展はとても深刻な問題と言える。糖尿病の予防、治療の基本は血糖コントロールであり、それは糖化ストレスへの対策と重なるものだ。つまり、アンチエイジングにおける糖化ストレス対策は、糖尿病の予防に直結するものである。

筋肉硬化による血流障害
血管と筋肉は隣り合わせに存在するが、筋肉もまた糖化によりコラーゲン(筋肉成分の1/3がコラーゲンである)が硬化し、血管を圧迫する。特に脊柱起立筋群の糖化は大動脈、大静脈を圧迫し、全身の血流を阻害する。これが冷え性であるが、頭痛、肩凝り、腰痛、生理痛、ひざ痛などは、筋肉糖化による血流障害の影響が大きい。